アルゼンチン最大の電力供給会社がシステム統合を効率化

Empresa Distribuidora y Comercializadora Norte S.A. (Edenor) はアルゼンチン最大の電力供給会社です。停電の継続時間と頻度を減らし、問題解決を迅速化するために、Edenor はより高速で信頼性の高い統合ソリューションの導入を検討していました。Red Hat OpenShift および Red Hat Integration テクノロジーで標準化することにより、Edenor は、チームや地域全体にリアルタイムデータを提供し、システムパフォーマンスに影響を与えることなくスケーリングを行って、日々生じる数十万件ものイベントに対応できるようになりました。コンテナベースのテクノロジーへの移行の一環として、Edenor のチームは DevOps とアジャイルアプローチの採用により、コラボレーションとイノベーションを生む働き方をサポートする文化を取り入れました。

イメージコンテナ


メリット

  • 1 日 800,000 件を超えるイベントをサポートする、スケーラブルで信頼性のある統合を実現
  • 開発時間を数カ月から数週間に短縮
  • 問題解決期間を 70% 短縮して顧客サービスを向上
  • コンテナ、アジャイル、DevOps のテクノロジー専門家から知見を獲得

統合とデータアクセスを単純化して、信頼できる電子サービスを提供

Empresa Distribuidora y Comercializadora Norte S.A. (Edenor) はアルゼンチン最大の電力供給会社で、およそ 900 万の国民に電力を供給しています。同社はブエノスアイレス市内および周辺の 20 地区をサービス対象とし、78 基の変電所、3 つの供給点、数千の変電所および電力線を有しています。Edenor は架空および地下送電網による配電システムを自社で管理しています。

約 3 年前、Edenor はサービス品質を劇的に改善する取り組みに着手しました。この取り組みは、停電の継続時間と頻度を減少させ、運用効率を向上させ、顧客に正確な情報をタイムリーに提供するというものです。これを成功させるには、システムとアプリケーションを接続する大規模で複雑なネットワークを単純化して更新する必要がありました。Edenor の業務のすべてを支えているのが、請求および顧客対応、停電管理、資産管理およびエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP)、フィールドサービス管理という、4 つのコアシステムです。これらのシステムにはバッチ処理とリアルタイム処理の両方で同期されるデータが含まれ、多数の統合が必要でした。

効果的なサービスを提供するため、Edenor のシステムには、タスクをコアシステムにすばやく確実に送信することが求められます。「たとえば、変更文書サービスは 35,000 件の更新を受け取り、800 件の技術的なルーチンタスクの優先度付けを向上しています」と、Edenor テクニカルプロセス部門統括 Leonardo Corino 氏は語ります。「このサービスには、公共の安全に影響を与えかねない事故や電気の問題を防止するため、最新の情報が必要です」

Edenor で使用していた既存の統合ソリューションには、このような複雑なサービスとシステムをサポートするための安定性とデータ可搬性がありませんでした。同社は、応答性と適応性に優れた統合テクノロジーを使用してアプリケーション、サービス、アプリケーション・プログラミング・インタフェース (API)、システムの接続を単純化し、さらにはプロセスを自動化して問題解決を迅速化し、リソースの使用を最適化してスケーラビリティを改善することを、オンプレミスとクラウドの両方で実現することを目指しました。この新しいテクノロジーは、新しい組織モデル (コラボレーションを重視するアジャイルのアプローチ) によってサポートしていくことになります。

「当社が毎日直面していたパフォーマンスの問題は、次第に迅速な解決が困難になっていきました。この課題を踏まえ、イノベーションをよりよく支援する各種テクノロジーを使用する別のアーキテクチャを採用しようと考えるようになりました」と、Edenor のソリューション・アーキテクチャ担当 副マネージャー María Alejandra Trozzi 氏は語ります。

Kubernetes コンテナベースの統合プラットフォームをエンタープライズ向けオープンソース・テクノロジーで構築

Edenor は、統合の課題に対処するうえで、特定ベンダーへ依存することなく先進的なテクノロジーとアプローチを活用できるよう、エンタープライズ向けオープンソース・ソリューションの選定に焦点を当てました。「オープンソースとは、言い換えるならば、コラボレーションによるイノベーションで新たな発想を得る力です」と Trozzi 氏は語ります。「大規模なコミュニティが協力しながら作成と開発を行うので、そこには新たな方法での問題解決を導くすばらしい力があります」

同社は、オープンソース・イノベーションのメリットを活用するために Red Hat テクノロジーの採用を決定しました。そして、重要な公共ユーティリティサービスに必要とされる信頼性とサポートへのアクセスを維持しながら、クラウド・コンピューティング等の技術的目標を達成することを目指しました。

「Red Hat が提供するテクノロジーによって、当社の統合の課題を解決できる信頼性の高いプラットフォームを作成することができました。その手法は、他のプロバイダーには真似のできない優れたものでした。また、同時に企業文化を変革する DevOps のような新しい働き方を学ぶ経験もできました」と Edenor の CIO、Luis Lenkiewicz 氏は語ります。

Edenor は、新しい統合への取り組みの基盤として、Red Hat Integration のソリューションと、ハイブリッド・インフラストラクチャ全体でアプリケーションとデータを接続する一連の統合およびメッセージング・テクノロジーを導入しました。Red Hat Fuse は分散型のユニバーサル・プラットフォームで、環境やチームを越えて、レガシーシステムのあらゆるものを API に接続します。Red Hat AMQ は信頼性に優れたスケーラブルなリアルタイム・メッセージング機能を提供します。さらに同社は Kubernetes ベースの Red Hat OpenShift Container Platform を導入し、コンテナ・テクノロジーによって統合戦略を強化しました。

Edenor の統合アーキテクト Marcelo Moras 氏は次のように語ります。「最初のデプロイ時、コンテナの概念に触れました。それまで馴染みのなかったものですが、すぐにスケーラビリティ上のメリットを理解しました。今では、いくつかの重要な統合機能をサポートするために Red Hat OpenShift を使用しています」

Edenor では、5 つの主要なプロダクションサービスの移行を中心として初期実装を行いました。このとき、モバイルモニタリング、オンライントランザクション、車両モニタリングのサービスが対象に含まれていました。これらのサービスの移行が成功し、Edenor は主要な統合の 1 つである、低電圧および中電圧の停電管理システムとフィールドサービス管理システムとの統合を、OpenShift と Red Hat Integration へと移行しました。エンタープライズ・オープンソース・テクノロジーとコラボレーションによる開発アプローチの導入を成功させたことで、Edenor は 2020 Red Hat Innovation Award を受賞しました。

適応力に優れた IT とアジャイルのアプローチでデータアクセスの高速化と信頼性向上を実現

統合の強化

統一されたコンテナベースの管理プラットフォームにより、Edenor は統合への取り組みを単純化および最適化しました。 

「インフラストラクチャの信頼性が高まり、情報がさらに迅速に流れるようになりました。何かを送信するときに、送信先に遅れて届いたり破損したりといったことを心配する必要がなくなりました」と、Edenor のテクニカルプロセス担当副マネージャー Alfredo Lanatta 氏は言います。

Representational State Transfer (REST) API 標準のサポートと負荷分散の変更により、Edenor システム間の接続とデータ転送が単純化されて信頼性が向上し、大規模な場合でもエラーが減少しました。

「Red Hat プラットフォームを導入する以前は、当社の統合チームは数時間かけて障害を分析し、情報が失われた場合はプロセスを再適用しなければなりませんでした。Red Hat のテクノロジーを実装してすぐに、エラーや情報の損失がなくなり、特に 1 日 800,000 件近くのイベントを受信するサービスでは、可用性が大幅に向上しました」と Moras 氏は語ります。

各サービスは固有のコンテナでホストされるので、遅延や他のパフォーマンスの問題が生じることなく、自動的にスケーリングしてピーク時の要求増加に対応できます。「問題を解決し、変化に対応して進化するために必要としていたスケーラビリティを手に入れました」と Trozzi 氏は言います。「OpenShift のおかげで、データへのアクセスが向上し、優れた知見が得られ、制御性が強化されました」

より効率的な開発

よりアジャイルでコンテナベースの統合アプローチへの移行の一環として Edenor は、応答性と効率性を等しく発揮できるよう、文化と働き方を適合させようとしました。この変革を達成するため、同社のチームは DevOps、アジャイル、継続的インテグレーション/継続的デリバリー (CI/CD) の各アプローチに従い、共同作業を開始しました。この変革にとっての鍵は、Red Hat OpenShift による自動化でした。

「新しいプラットフォームの機能を完全に利用するには、これまでの働き方を調査して、個々のチームと専門性を連携させる必要がありました」と Trozzi 氏は語ります。「OpenShift によるロールや環境を越えた作業のサポートは、DevOps 体制の実現に欠かせない要素です」

中でも、一般的なプログラミング言語とプロトコルをサポートする単一のプラットフォームへと標準化したことで、開発作業が容易になりました。OpenShift を使用して定型的な繰り返し作業をベストプラクティスに基づいて自動化することで、Edenor の開発者はそれらの作業の代わりに、同社のエンドカスタマーに革新的なサービス改善を提供するための取り組みに集中できるようになりました。

「OpenShift のおかげで、新しい開発環境を迅速に作成し、他のチームやテクノロジー分野に頼ることなくテストを完了できるようになりました」と Moras 氏は語ります。「コンテナを使った使った作業が驚くほどシンプルになりました。以前は 1 時間かかっていた作業が、今ではこのプラットフォームによって自動的に完了します。更新をやり直したり構成を気にしたりせずに、新しい統合を実装するために時間を使えるようになりました」

Red Hat テクノロジーでサポートされるこれらの新しいアプローチを採用した結果、Edenor では開発の所要時間が数カ月から数週間に短縮されました。「要求を受け取ってから本番環境に導入するまでの時間はさらに短くなります」と Lenkiewicz 氏は言います。

問題解決の迅速化で顧客サービスを改善

DevOps と Red HatOpenShift を導入したことで、開発が迅速化された以外にも、統合やその他のプロセスが改善され、より迅速に顧客の問題に対応できるようになりました。停電や電力ネットワークに必要な修理に関するアラートをフィールド・メンテナンス・チームに送信する時間が 3 分から 10 秒未満へと短縮されました。これにより、チームは信頼できる情報にリアルタイムでアクセスして問題を解決できるようになりました。また、インシデント対応時間は 70% 短縮されました。

「Red Hat テクノロジー、DevOps、CI/CD により、これまで解決に 1 週間ないし 2 週間かかっていた問題を、時にはその日のうちに解決できるようになりました」と Moras 氏は語ります。「内部のチームだけでなく、電力サービスを利用するエンドユーザーの顧客満足度も高くなりました。システム統合がうまくいったことで、すべての人に提供する情報の精度が高まったためです」

エキスパートによるエンタープライズ・サポートとトレーニングの利用

Red Hat 製品の実装計画の一部として、Edenor は新しいコンテナ・プラットフォームと統合テクノロジーを適切にデプロイできるよう、Red Hat コンサルティングと密接に連携しました。さらに Red Hat トレーニングからも、新しいテクノロジーや、アジャイルおよび DevOps のベストプラクティスに関する実践的な指導を受けました。このガイダンスにより、Edenor のチームはイノベーションの目標を単独でも達成していける体制を整えました。

「この変革は技術面でも文化面でも困難なものでした。コンテナやマイクロサービスなどの新しいコンセプトが導入されました。Red Hat からは、これらの課題を克服するために適切なツールが提供されました」と Trozzi 氏は語ります。「Red Hat は当社の新しいアーキテクチャの技術的な設計を調整するために協力的な姿勢で、人間的なパートナーシップが生まれました。このパートナーシップこそが、私たちが得た成功と成果の鍵となりました」

統合の改善を拡大してイノベーションを継続する

Edendor は現在、サードパーティの決済企業との統合を含む、Red Hat ベースのプラットフォームの新しい統合に取り組んでいます。OpenShift を使用して、技術的および商業用システムのすべてをデジタルチャネルに接続する一連の API をホストする計画です。同社は停電管理システム (OMS) やフィールドサービス管理 (FSM) システムなどのシステム間の通信を強化し、顧客問題レポートへの対応をさらに改善しようとしています。

Edenor の OpenShift と Red Hat Integration 環境がサポートするもう 1 つの新しいプロジェクトとして、スマートメーターの取り組みがあります。Lenkiewicz 氏は次のように言います。「スマートメータープロジェクトは、大規模および中規模のお客様を中心とした、当社の電力売上の 50% を対象にしています。このインテリジェントなソリューションからは、新しいビジネス開発に役立つ大量のデータが得られると見込んでいます」

Edenor では引き続き Red Hat のテクノロジーを利用し、インフラストラクチャとサービスの継続的な改善をサポートしていく予定です。「Red Hat は、技術的に優れているというだけでなく、スタッフが持つプロ意識と専門知識の面でも適切なプロバイダーでした」と Trozzi 氏は語ります。「当社がこの統合プロジェクトにおけるビジネス上および技術上の目標を達成できたのは、Red Hat のおかげです」

Empresa Distribuidora y Comercializadora Norte S.A. について

Empresa Distribuidora y Comercializadora Norte S.A. (Edenor) は、顧客数と電力販売量 (発電量および販売額の両方) の両面で、アルゼンチン最大の電力供給会社です。面積 4,637 平方キロ、人口およそ 900 万人を擁するブエノスアイレス州北西部とブエノスアイレス自治都市北部で、独占的に電力を供給する権利を有しています。サービス区域での顧客需要に対応するために使用されたエネルギー購入量は、2018 年の国内総電力需要量のおよそ 20% を占めています。